カバンの中身

今週のお題「カバンの中身」

 

近頃、私のカバンに必ず入っているのは、母子手帳である。

それは今年5月に生まれた子と片時も離れず過ごしているということである。

カバンに入っているとはいえ、毎日使うわけではない。

もし外出先で怪我をしたら、体調が悪くなったら。

いつでも子のことを説明できるように、お守りみたいに持ち歩いている。

 

子どもが結婚したら、母子手帳を子どもに持たせる母親がいると聞いたことがある。

昨年末、私の夫も例に漏れずそれを受け取っていて、

早めに頼んだおせちを頬張りながら、私と夫とその両親と、

夫が生まれた日のことをわいわいと話していた。

当時、私のお腹にはもう子が宿っていて、

夫のエコー写真とこれから生まれる子のエコー写真を見比べたりもした。

 

先日、夫の母が他界した。

あの賑やかな夜から、まだ1年も経っていない。

昨年末に会った時も病気を患っていたけれど、

お別れを受け入れる覚悟というのは、ずっとできなかった。

 

慌ただしく葬儀が終わり、家に帰る。

夫が押し入れから大事そうに取り出して見ていたのは、あの母子手帳だった。

ページをめくると、激しさのある文字が語りかけてくる。

まぎれもなく夫の母が生きていた証拠だと思った。

そして、夫のことを大事に大事に思っていたこと。

普段は気丈な夫が、声をあげて泣いていた。

 

カバンの中には、いつも大切なものが入っている。

いつか持ち歩かなくなったときも、私の歴史の一部のように

手元に残り続けるのだと思う。