無職と季節感

平日の真ん中に休みを貰った。

それも昨日急に決まった休みで、特に予定も会う人もいなかった。

 

コロナの影響で遠くには行けないから、

自転車で行ける範囲で気になっていた場所に出向く。

武家屋敷が残るエリア、新しくできたベーグル屋さん、改装中のライブハウス。

お昼はパンを買って帰ろうと思っていたが、

平日しか開いてなさそうなぎょうざ屋さんに立ち寄ることにした。

(後で調べたら普通に日曜日も開いていた!)

 

自転車の旅は暑い。

汗がにじんで、自分が水臭く感じる。

仕事のときに流す汗とはまた違うもの。

ただただ暑くて流す汗。

 

ふいに去年の夏のことを思い出した。

私は無職だった。

それまで一日の大半を過ごしていたオフィスとは違って、

集合住宅の部屋の中は日差しが強く、風が吹き抜ける。

季節ごとの温度や湿度がそこにはあった。

 

午後。

無職の頃のように、畳に寝転がってぼんやりと空を見る。

夏の空は高い。

いつのまにか蝉時雨の音が薄まっている。

 

きっと知らない間に秋が来て、冬になるのだろう。

忙しいときに忘れてしまう、季節の感触。

味わっているうちに、17時半のチャイムが鳴った。