メロンパン

今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」

 

小さい頃、学校が終わって母が迎えに来るまでの時間を祖父の家で過ごしていた。

田んぼの真ん中の一軒家。

周りにあるのはコンビニくらいで、自然に囲まれた場所だった。

祖父は大体リビングの健康イスに座り、テレビを見ている。

学校から帰った私に気づくと、お菓子やカチコチに凍ったバナナをおやつとして出してくれた。

 

ある時、祖父が「◯◯ちゃん(私)は何のパンが好きなのかな?」と私に聞いた。

私は適当に「メロンパン」とだけ答えた。

 

それから、毎日おやつにメロンパンが出てくるようになった。

近くのコンビニで買ってきたもの。

でも、チョコチップ入りやザラメが大きいものなど、

毎日違うものが出てきて。

時にはレジ袋に入ったまま出てくることもあって、

きっとそれだけのために買いにいってくれたんだろうと思った。

 

メロンパンが売り切れていたであろう日は、

なぜかレーズン入りのネオバターロールを買ってくれていた。

あれ、溶け出すマーガリンが美味しいんよね…

気がついたら1袋食べてしまって、祖父が目を丸くしてこちらを見ていたこともあった。

 

私が何も考えずに答えた日から、

おやつにメロンパンが出てくる生活は、

小学校を卒業するまで2〜3年続いたように思う。

中学校に上がってからも夕方は祖父の家で過ごしていたけど、

部活で帰宅が遅くなったり、祖父もあまり外に出なくなったりして、

いつのまにかおやつを食べる習慣がなくなってしまった。

 

本当は、毎日食べたいくらいメロンパンが好きなわけではなかった。

私が好きなものとして答えたからこそ、

ずっと買ってくれていた気がして、いつも食べていた。

 

思えば毎日一緒の家で過ごしていたのに、祖父とはあまり話をしなかった。

私はどちらかというと大人しい子どもだったし、

祖父も寡黙で、私がおやつを食べ終わったあとは、

別室で宿題をしている私の様子を伺いにくるくらいだった。

 

言葉は無かったのに、私は祖父と過ごした時間を今でも鮮明に思い出せる。

それはメロンパンに込められたやさしさみたいなものを

ずっと自分が感じとっていたからだと思う。

 

今でも、メロンパンを見るたびにおじいちゃんを思い出す。

仕事から帰ったら、食卓に置いてあったりしないかな。